【成分解説】ニワトリ多能性細胞培養順化培養液(ovaco EGG B.P Cell:通称「鶏卵幹細胞」)
目次
はじめに
ovacoで「鶏卵幹細胞」と呼んでいる、成分の正式名称は「ニワトリ多能性細胞培養順化培養液(ovaco EGG B.P Cell)」です。
この成分を、端的に一言で表現するなら「卵由来の、胚性幹細胞培養上清液」です。
※幹細胞培養上清液については、「こちら」をご確認ください。
今回は、本成分について、どのようなものかを説明できればと思います。
ニワトリ多能性細胞培養順化培養液(ovaco EGG B.P Cell)について
ovaco EGG B.P Cell の正体
前回、コラムでは、幹細胞の種類を2つの切り口で見ていきました。
一つは、「何由来か?」という切り口です。
それには「(A)ヒト由来」「(B)植物由来」「(C)動物由来」という3種類があるというお話をしました。
また、「どのような分化の段階か?」という切り口では、以下の3つの種類があるというお話をしました。
①全能性幹細胞(totipotency)
②胚性幹細胞(pluripotent) ※1
③組織幹幹細胞(multipotent)
結論だけ先にお伝えすると、ovacoのニワトリ多能性細胞培養順化培養液(ovaco EGG B.P Cell)は、
「(C)動物由来」の、「②胚性幹細胞(pluripotent)」にあたるものです。
※1:ES細胞:Embryonic Stem Cell
「胚性幹細胞」の特徴
細胞分裂から見る胚性幹細胞
「全能性幹細胞」「胚性幹細胞」「組織幹細胞」を細胞分裂と対比させると、以下のようなイメージになります。
①未分割(細胞1個の状態)※受精卵の状態
②1分割目(細胞2個の状態)
③2分割目(細胞4個の状態)
④3分割目(細胞8個の状態)
⑤4分割目(細胞16個の状態)
…
全能性幹細胞は①、胚性幹細胞は②〜④、組織幹細胞は⑤にあたります。
なお、ovacoで使用されている成分「ニワトリ多能性細胞培養順化培養液(ovaco EGG B.P Cell)」は、「②〜④の胚性幹細胞」にあたります。
胚性幹細胞と組織幹細胞の違い
「胚性幹細胞(pluripotent)」とは、3分割目(細胞8個)までの状態で、細胞1つから、1人の人間を生み出すことが可能です。
「pluripotent」の意味は「多能性・万能」という意味を持ち、その名の通り「命令次第で何にでもなれる細胞」といえます。
つまりは、「胚性幹細胞」の場合、8個の細胞のうち、1個の細胞が死んだとしても、1人の人間へ成長することが可能です。
一方、「組織幹細胞」とは、4分割目以降(細胞16個以上)の状態ですが、細胞1つ1つの役割(分化できる方向性)が決まってしまうため、1つの細胞から1人の人間を生み出す機能は失われます。
つまり、「組織幹細胞」の場合、16個の細胞のうち、1個の細胞が死んだら、16個の細胞全てが死ぬということです。
これが、「胚性幹細胞」と「組織幹細胞」の違いです。
ちなみに、余談になりますが、理論上、人間を含め、動物は一卵性の8つ子までを産むことが可能です。
また、ここまで話した原理は、動物にも当てはまります。
幹細胞についてもっと知りたい方は、こちらのサイトの説明が、非常にわかりやすいので、参考にしてみてください。
【再生医療ポータル】
https://saiseiiryo.jp/basic/detail/basic_06.html
https://saiseiiryo.jp/basic/detail/basic_02.html
「由来成分」からみる幹細胞の特徴の違い
各由来成分の特徴を、もう少し細かくお話できればと思います。 (※幹細胞の由来成分の詳細については、「こちら」をご確認ください)
植物由来幹細胞の特徴
植物由来幹細胞は、主に種子の中の胚や根の先端、茎の付け根から抽出されますが、注目すべきは「動物(ヒトを含む)」と「植物」のメカニズムがそもそも異なる点です。
植物にも、外界の刺激から身を守る機能は存在しますが、動物やヒトの「皮膚」とは異なります。
また、その観点から見ると、植物由来幹細胞と、動物・ヒト由来幹細胞では、「化粧品に配合している目的」が違うと言えます。
ヒトや動物由来幹細胞を配合した化粧品は「皮膚のターンオーバーの乱れを整えること」に着眼していることに対し、植物由来幹細胞を配合した化粧品は、「肌の潤いやハリつやを保つこと」に主旨を置いており、そもそもの目的が違います。
植物由来幹細胞の場合、抗酸化成分や保湿成分を抽出することができ、ヒトや動物由来の幹細胞と比べるとコストを抑えて化粧品に配合することが可能です。
そのため、ターンオーバーの周期がある程度整っている20代の方や、比較的安価な価格帯でスキンケアをしたいという方々には、適していると思います。
ヒト由来幹細胞の特徴(①胚性幹細胞)
精子と卵子が出会い、1つの受精卵ができますが、ヒトの胚性幹細胞とは、受精卵をもとに培養したものです。
ヒトの胚性幹細胞は、他人の受精卵から作られた細胞の場合、移植した場合は、拒絶反応が生じるという問題があります。
また、ヒト由来の幹細胞培養の際、元となる胚は不妊治療で不要になった「余剰胚」から提供者に同意のもとで用いられていますが、生命の源である胚を壊して作るという観点に、倫理上の違和感を持つ人も少なくなく、法整備含めて体制の整備が必要と考えられています。
ヒト由来幹細胞の特徴(②組織幹細胞)
ヒト由来幹細胞には、色々な種類がありますが、大きく分けると、以下の3種類があります。
骨髄(骨の中)に存在し、血中に含まれる細胞のもととなる幹細胞です。
赤血球と血小板、すべての免疫細胞に分化します。
【 ②間葉系幹細胞(MSC) 】
骨髄や脂肪組織、歯髄(歯の中)、胎盤などの幅広い組織に存在し、脂肪細胞や血管の細胞、神経細胞、筋細胞、軟骨細胞、皮膚細胞などに分化します。
【 ③神経幹細胞(NSC) 】
脳内に存在し、脳(神経組織)を構成する細胞のもととなる幹細胞です。
神経細胞のほか、脳の構造を支えるアストロサイトや、神経伝達を速めるオリゴデンドロサイトに分化します。
医療の世界で肌再生治療に用いられたり、化粧品に配合されたりする幹細胞で多いのは、②の間葉系幹細胞(MSC) です。
中でも近年は、脂肪幹細胞を使用した商品やサービスが増えている傾向にありますが、こちらは「組織幹細胞」の一つです。
そのため、抽出されている信号、つまりは成長因子の種類や量が鍵を握っているといえます。
ovaco EGG B.P cell(ニワトリ多能性細胞培養順化培養液)の特徴
「ニワトリ多能性細胞培養順化培養液(Egg blastoderm pluripotent stem cells)」は、鶏の卵を細胞分裂3分割目(細胞8個の状態)まで孵化させて、そこから科学の力で培養したものになります。
人間の肌のターンオーバーメカニズムに働きかける信号物質を抽出したい場合、植物からではなく、動物から抽出する必要がありました。
また、適しているのは「人間の胚性幹細胞」、つまりは胎盤から抽出する方法ですが、命の問題があり、倫理的観点から難しいものがあります。
そこで、近年は、化粧品への配合成分として、脂肪幹細胞に注目が集まっていますが、
脂肪幹細胞は運命が決まっている細胞のため、胚性幹細胞と比較すると、信号のレベルが圧倒的に違います。
脂肪幹細胞であっても、どのくらいの量をどのくらい濃い濃度として配合するかによっては、胚性幹細胞と同じレベルでの信号を出すことは理論上は可能と思われるので、
一概に「胚性幹細胞の信号>脂肪幹細胞の信号」とはいえませんが、相当の技術力とコストが問われることになります。
他に、ヒト幹細胞の中でも、骨髄由来、歯髄由来のものが、胎盤由来のものと同程度のグロースファクターの分泌があると言われていますが、
骨髄幹細胞や歯髄幹細胞は医療等の他分野での需要が非常に高いため、化粧品への配合を目的として安定的に供給することは、現状では難しい状況にあります。
そこで、ovacoの研究チームで検討を重ねる中で、動物の中でも鶏の卵に注目しました。
鶏の卵を、細胞分裂3分割目の段階(細胞8個の段階)まで孵化させ、そこから培養するということをし、そこから成長因子(グロースファクター)を抽出したものが、「ニワトリ多能性細胞培養順化培養液」です。
「鶏卵幹細胞」についてのよくある質問
①卵を何個使ったんですか?
鶏の卵が細胞分裂を開始してから、8個の段階で1回抽出をして、科学の力で培養しています。
数ヶ月培養したものを最初の製品に使用し、その後マイナスで冷凍保存をし、必要なときに解凍して増やします。
培養されたそのものの細胞は廃棄します。
②卵アレルギーなのですが…
抽出しているのは幹細胞を培養したときに出る「信号物質」のため、卵アレルギーは関係がありません。
国際評価について
INCIに登録されている商品です
化粧品成分の国際的表示名称として、以下の内容で、INCIに登録されています。
・世界で初めて、「EGG Blastodermal Pluripotent Stem Cells(鶏卵幹細胞培養上清液)」を化粧品に採用!
・「体内の再生信号を刺激することに着目した化粧品」として、海外の有名な展示会でも受賞しました。
2017年のCOSMOPROF(香港)でBEST AWARD受賞
COSMO PROFは、国際的な化粧品の展示会です。
この展示会で、次の世界の化粧品業界のトレンドが作られるといっても過言ではありません。
2017年に香港で開催されたCOSMO PROFで、「BEST AWARD」を受賞しています。
【参考文献】
・再生医療ポータル
https://saiseiiryo.jp/basic/detail/basic_06.html
https://saiseiiryo.jp/basic/detail/basic_02.html
・パーソナルiPS
https://personalips.com/archives/838
・Beauty & health
https://s3b.tokyo/beauty/stem-cell-therapy/