肌理論から見る保湿メカニズム(「外側の保湿」と「内側の保湿」の違い)
目次
はじめに
このコラムでは、肌のバリア機能と保湿の関係について、見ていきます。
敏感肌とは?
「敏感肌」という言葉がよく使われますが、「敏感肌」という、正式な医学的用語や病名があるわけではありません。
一般的には、「肌のバリア機能が低下することで、 些細な刺激に対して痛みや痒みなどを引き起こす」状態を指し、紫外線や化粧品、外気中のほこりなどで皮膚トラブルを起こしやすい肌のことを意味します。
つまり、通常では刺激にならない物質に対して敏感に反応する肌状態のことです。
肌のバリア機能とは?
敏感肌とは「肌のバリア機能が低下している」状態です。
では、肌のバリア機能とは何かを詳しく見ていきましょう。
お肌の「バリア機能」とは、その名の通り、体を守るための皮膚の働きの一つです。
この機能は、乾燥や摩擦、紫外線や雑菌などのあらゆる外部刺激からお肌を守ります。
皮膚は「表皮・真皮・皮下組織」の3つの層に分かれており、一番外側にある「表皮」の「角質層」がバリア機能を担っています。
この角質層で重要なバリア機能を担っているのが「保湿」であり、 保湿には「外側の保湿」と「内側の保湿」があります。
外側の保湿:皮脂による保湿
肌の表面は、汗と皮脂が混ざり合った状態で皮膚をヴェールのように覆うことで、水分の蒸発や乾燥を防ぐ役割を果たしています。
内側の保湿:細胞間脂質とNMF(天然保湿因子)による保湿
内側の保湿は、細胞間脂質とNMFで構成されています。
細胞間脂質は角質細部同士を繋ぐボンドのような役割を果たし、保湿成分として機能します。
NMFは「Natural Moisturizing Factor」の略で、角質細胞内にある天然の保湿成分です。
水分を取り入れる働き(吸湿性)と水分を抱え込む働き(保湿性)に優れています。
外側の保湿と内側の保湿の関係性
皮脂を出す目的は、前述の通り、肌の乾燥を防ぎ、必要な水分を保つことです。
内側の保湿が不十分の場合、
皮脂を出すことで乾燥を防ごうとする肌のメカニズムがあり、
結果、「皮脂が過剰分泌される」というオイリー肌のような現象が起こります。
「本来は肌の内側が乾燥しているが、乾燥を補うために皮脂が過剰分泌されており、オイリー肌のような状態になっている」
この肌状態が、「隠れ乾燥肌(インナードライ)」です。
大人のオイリー肌の原因は「乾燥(インナードライ)」かもしれない
思春期のオイリー肌と、大人のオイリー肌の原因は異なります。
実は、大人のオイリー肌の多くの原因はインナードライです。
インナードライとは、先ほど説明した「内側の保湿」がうまく働かずに角質層が乾燥し、
肌表面に皮脂が過剰分泌される状態です。
見た目は脂性肌(オイリー肌)に似ているため、自分の肌質を誤認識していることがあります。
肌で保持できる水分量は「器」で決まる
肌の水分量は、赤ちゃんを100とすると、30代ではその約半分にまで低下し、その後も加齢とともにさらに減少していきます。
お肌の保湿、特に「内側の保湿」は、風船をイメージすると分かりやすいでしょう。肌が保持できる水分量は、風船の大きさ、つまり「器」の大きさに依存します。
赤ちゃんの肌は、風船がしっかりと膨らんでいる状態で、必要な水分を十分に保持できる状態です。しかし、加齢とともに風船が萎むように、肌も水分を保持する「器」が小さくなっていきます。その結果、どれだけ保湿を試みても、器が小さいため、肌に水分を保持することが難しくなります。
したがって、加齢による「器」の縮小を防ぐための対策が必要です。肌が水分をしっかり保持できるよう、日々のケアが大切です。
外側の保湿と内側の保湿の対応方法
外側の保湿の対策方法
外側の保湿対策で有効な方法の1つは「クリーム」です。
クリームには、皮脂に含まれる成分が入っており、皮膚に塗ることで皮脂の役割をします。
若いうちはクリームの使い過ぎに注意
クリームは、皮脂分泌が減少した肌にとって、非常に効果的な保湿手段です。
しかし、若いうちはその使用に注意が必要です。
クリームをたっぷり使用すると、肌がクリームによる保湿に依存し、「外側の保湿」および「内側の保湿」の機能が衰えてしまう可能性があるからです。
具体的には、クリームで保湿されていると、肌が「内側の保湿」を行う必要がないと勘違いし、NMFや細胞間脂質といった内側の保湿因子を生成する「内側の保湿」の機能が低下します。
また、スキンケアでクリームをたっぷりと塗り続けることで、肌は「皮脂を作らなくてもクリームがあるから大丈夫」と認識し、皮脂をつくる「外側の保湿」機能の衰えも早まる恐れがあります。
若いうちから「私は乾燥肌だから」といって、クリームを使う人がいますが、
上記で説明した通り、実は皮膚が本来持つ保湿機能を衰えさせることにつながってしまうのです。
そのため、ovacoでは20代以前の方にはクリームの使用量を少なめにすることを、お薦めしています。
※「肌のアダプト」という現象が起こり、皮脂や保水因子を作らなくなっていくということが起こります。
※「肌のアダプト」については、「こちら」をご覧ください。
クリームが不要というわけではありません。
「スキンケアにクリームは不要」「クリームを使わないことが良い」という話ではありません。
あくまで「若い頃(10代・20代)のうちから、クリームに頼りすぎると、肌の本来が持つメカニズムを失わせることにつながる」ということです。
肌のターンオーバー機能は、20代後半頃を境に徐々に衰えていき、老化していく現象は誰もが通る道です。
年を重ねると、外側の保湿(皮脂の分泌)機能も衰えていくため、外側の保湿が重要になってきます。
ご自身の肌や年齢に合わせたスキンケアが非常に重要です。
内側の保湿をする方法
内側の保湿に必要なことは、「皮脂を補うためのクリームを塗る」ことよりも、
保水因子をしっかりと補うための、化粧水(ローション)や美容液(セラム)を使うことが重要です。
また、肌のターンオーバーメカニズムや保湿のメカニズムが健全に働くようにしていく事が必要です。
そのためには、外側の保湿や内側の保湿をするための基礎化粧品を使うだけではなく、バランスの良い食事、睡眠の摂取、ストレスを溜めない工夫など、 生活習慣をしっかりと見直していくことも重要です。
また、本来皮膚が持っている能力が、ちゃんと発揮できるようにしてあげることは大事です。 とすれば、10代、20代のうちは、前述の通りクリームを使いすぎずに、内側の保湿機能がしっかりと働くようにすることもポイントです。
肌の保湿を促すスキンケアのポイント
肌の保湿を保つためには、「バリア機能の強化」と「ターンオーバーの正常化」が鍵です。
これらを実現するために、以下のポイントを意識してスキンケアや生活習慣を見直すことが大切です。
保湿力の高いスキンケアアイテムを使用する
保湿を成功させるためには、水分と油分の両方を適切に補うことが必要です。
水分を補っても、油分でしっかり蓋をしなければ、水分が蒸発し、かえって乾燥が進むこともあります。
水分を与えた後は必ず油分で保護し、肌が水分を保てるようにしましょう。
また、セラミドなどの保湿成分を含んだスキンケアアイテムを使用するのも効果的です。
セラミドは、角質細胞間脂質の一つで、肌の保水力を高めます。
洗顔後はすぐに保湿する
洗顔や入浴後は、肌が無防備な状態で水分が蒸発しやすくなっています。
肌の乾燥を防ぐためには、洗顔後できるだけ早く、5〜10分以内に潤いを補うことが重要です。
これにより、肌のバリア機能が保たれ、適切な水分量が維持されます。
お肌に良いライフスタイルの見直しも
さらに、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理も、肌のバリア機能を高め、保湿力を維持するために大切です。
特に食事は、栄養バランスが肌に直接影響を与えます。忙しい時は、必要な栄養素を簡単に補えるサプリメントを活用するのも良い方法です。
日々の保湿ケアを見直し、潤いに満ちた健康的な肌を目指しましょう。
さいごに
人間の体が本来持つ自然のメカニズムがあります。
その中に「肌を保湿する」という機能があります。
この保湿機能を保持している角質層の厚さは、たった0.02mm。
サランラップ1枚分の超薄い膜が、私たちの肌を守る、城壁です。
肌の保湿には「内側の保湿」と「外側の保湿」があります。
両方とも大事な保湿機能です。
両者の特徴やメカニズムを押さえ、
皆様のお肌にとって最適な化粧品を選ぶことに役立てていただければと思います。